SENSE OF PRESENSE – 世界は響きあうからだ –

人間と自然をつなぐ芸術–art–へ向かって。感覚・表現・交感のゆたかさを探求する旅のノート:松井雄一郎

自分の感覚を手放さずに生きていくために

自分の感覚を深めて、
そのときの自分の感覚を信じて
どんどん進んでみたらいいんじゃないかな。

そこで出会う風景が、自分なのかもしれないし。

その可能性を、どこかで見たイメージややりかたに
絡めとられないように、とことん自分なりにやってみよう。

… 数年前、武蔵野美術大学で授業をしているとき
僕は、こんなことを感じ、伝えていた。

自分の人生を通して、集め、構築してきた
そのための方法を共有していた。

・ 
 
そして、そう言うからには
自分もそう生きようとしていた。

けれど自分の人生において
それを貫いていないというか

そうしていった先にちゃんと開ける場所があるよ
自分においては、その場所があったよ、と
感じられなくなったときに、

そう言える自信が揺らいだときに

僕は、若い人たちに
本当にそう伝えてもいいのか分からなくなり
ほどなくその仕事からは離れることになった。
 

  
自分の根幹にある美意識や姿勢と
自分の行動が離れていると

人は世界と自分自身への信頼を
見失ってしまうのかもしれない。

けれどそういう揺らぎですら
認めて、十分に感じきると
その先にはあらたな風景が見えてくるというか

たとえ根にある感覚は変わらなくても
ひとまわり鮮やかに確かに
それを手にしている自分がちゃんといる。

だから、やっぱりいつだって
自分なりの感覚を生きていいよ
それを手放さなくていいよと
言ってあげたい。

それでも、旅の途中でどうしようもなく
不安で、進めなくなるときもある。
もうやめたい、と思うときがくる。

そういう気持ちをすべてゆるしながらも
それでも

世界に対してあなたの心を閉ざす必要はない

ということを、無言で伝えていくのが
大人の仕事なんだといまは思っている。

 

(書いちゃったけど)