SENSE OF PRESENSE – 世界は響きあうからだ –

人間と自然をつなぐ芸術–art–へ向かって。感覚・表現・交感のゆたかさを探求する旅のノート:松井雄一郎

食い破って出てくる

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ある戸棚のなかに、近頃、

ちいさな虫がいるなあって思ってた。

 

で、今日やっぱり戸棚のなかに

なにか出どころがありそうだなと

思って、奥まで片付けてみた。

 

そしたら、棚の奥の奥に

忘れていた植物の実のなかから

たくさんの小さな虫たちが

生まれていた。

 

一瞬ギョッとしたけれど

生命力ってすごいな、

なんだか、もはや、美しいなと思った。

 

袋に手を伸ばして

さらにビックリした。

 

その小さな虫たちは、僕には

見ることもできないようなちいさな歯で

ポリエチレンの厚い袋をも噛み破って

外の世界へと、飛び出していた。

 

飛び出したところで

力尽きたものもたくさんいたけれど。

 

その虫をみるようになったのは

比較的最近からだったから

この季節に、旅立ちを迎えたのだと思う。

  

光も届かない戸棚の奥で

生命はずっと外へと飛び出る

その日を待っていたんだと思うと

覚えていたんだと思うと

 

このちいさな生き物のように

私の中にいて、私を食い破って

飛び出そうとしているような

そういう生命があっても

おかしくないなと思った。

 

いままでならば

 

食い破られるのが自分で

出てくるのは、

得体の知れないなにものかだと

思っていただろうけど

 

今日はなんとなく

食い破られる私は古いもので

外へ出ようとするものの方が

自分に近いのではないかと

なんとなく感じたりしている。

 

生命って、なんだろう。

自分て、誰だろう。

いまって、いつだろう。

ここって、どこだろう。

 

そんなことを問うことは無駄だと

誰が私に言い聞かせてきたんだろう。

 

さあ、午後の仕事へ、向かおう。