SENSE OF PRESENSE – 世界は響きあうからだ –

人間と自然をつなぐ芸術–art–へ向かって。感覚・表現・交感のゆたかさを探求する旅のノート:松井雄一郎

川が蘇る日に

その日

とうとう川が干上がった。

なぜそうなったのか

理由を知るために

若者は上流へ向かった。

上流は美しい森で

みずみずしい場所だった。

かれた川の上流には

おおきな湖があった。

湖から川へと

水が流れ出すところに

大きな、枯れた木が倒れて

水の流れを堰き止めていた。

正確には、枯れた木に

小さな葉っぱや細かな枯れ枝や

そういうものがどんどん

積もっていって

隙間のない大きな堰が

出来ていた。

若者は堰を崩そうとしたが

表面の枯葉を手でどけたところで

状況は変わりそうになかった。

途方にくれていると

1ぴきのビーバーがやってきた。

若者は彼に事情を話した。

ビーバーは

若者がある約束をするならば

この堰を崩そうと言った。

若者は、その約束を守ると言った。

ビーバーは水中へと潜っていき

とうとう、最初に倒れた木の幹を

歯でかじり割った。

堰の真ん中にあいた穴から

水が川に流れはじめた。

最初は少しの流れだったが

たまっていた水の

すべての重さがその穴へ向かい

とうとう堰は

大きな音を立てて崩れて

水が川に踊り流れ込んだ。

以後、その川の水が

かれることはなかった。

さて。

若者はどんな約束を

したのでしょうか。